慢性胃炎について
「胃がんになるリスクが高い胃炎」から「そこまで心配しなくても良い胃炎」まで、胃炎の種類は非常に多岐にわたります。発症の経過によって「急性胃炎」と「慢性胃炎」に分類されますが、一般的には「胃炎=慢性胃炎」となります。
胃炎はピロリ菌の感染に関わる胃炎と、そうでない胃炎があります。「胃カメラ検査を受けてみたら慢性胃炎があると指摘された」「健診でバリウム検査(または胃カメラ検査)を受けたら慢性胃炎と記載されていた」という方は、ご自身にどれくらいのがんリスクがあるのか気になるかと思われます。
このページでは慢性胃炎の分類と、ピロリ菌とのかかわりが深い萎縮性胃炎(慢性胃炎)について解説していきます。
ピロリが関係しない胃炎
表層性胃炎(稜線状発赤)
胃体部や前庭部(ぜんていぶ:胃の出口付近)に、粘膜表面に線状の発赤がみられる胃炎です。ストレスや不安、暴飲暴食などによる胃酸過多や胃の表面の防御機能の低下により胃の粘膜表面がただれてしまっている状態です。
胃の中の空気量を減らしてみると、胃のひだの頂部に沿って現れるのが分かります。
ピロリ菌に感染していない方によく見られる胃炎ですが、症状がなければ特に治療する必要はありません。
びらん性胃炎
胃の前庭部や胃体部に多く現れる胃炎です。「びらん」とは「粘膜筋板まで傷ついてはいないが、粘膜の組織が浅く欠損している状態」です。簡単に言いますと「浅い傷」を意味します。
ストレスや暴飲暴食、クローン病、痛み止めの服用などで発症し、症状がなければ治療の必要はありません。
胃カメラ検査で、先述した胃炎があると指摘された場合は、特に心配する必要がありません。
ピロリ未感染の胃
ピロリ菌に感染したことがない胃粘膜で、組織検査を行ってみると「粘膜に好中球(こうちゅうきゅう)がたくさんいない」「萎縮や腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)などがみられない」ことが分かります。またピロリ菌がいないと、RAC(regular arrangement of collecting venules)が綺麗に観察できます。RACとは、粘膜上皮下にある集合細静脈が規則正しく並んでいる状態です。
RACはピロリ菌に感染したことがない健康な胃の証拠として考えられています。このように、胃カメラ検査を行えば、ピロリ菌の感染の有無が確かめられるのです。
ピロリが関係する慢性胃炎
萎縮性胃炎
胃粘膜が薄くなることで、胃のひだが消えたり血管が透けて見えたりするようになります。ピロリ菌が棲んでいる状態ですので、胃がんの発症リスクも高い状態だと言えます。萎縮は胃の奥の前庭部から、少しずつ胃の小彎(天井部)へ進んでいきます。萎縮の重症度は「木村・竹本分類」によって分類されます。
「木村・竹本分類」
萎縮境界が胃体部小彎側で噴門を超えない「閉鎖型Closed Type(C1-C3)」と、噴門を超えて大彎側にも萎縮が拡がっている「開放型Open type(O1-O3)」に分かれます。
C-1:萎縮粘膜が前庭部にとどまるもの
C-2:萎縮粘膜が胃角部から胃体下部に至るもの
C-3:萎縮粘膜が胃体上部までにとどまるもの
O-1:萎縮粘膜が噴門周囲までにとどまり、大彎のひだはほぼ保たれているもの
O-2:萎縮粘膜が体部小彎側から前壁、後壁、大彎側まで進んでいる状態(O-1とO-3の間の状態)
O-3:大彎のひだが消失し、萎縮が全体に拡がっている状態
萎縮性胃炎の程度と胃癌リスク
人間ドックで胃がんが見つかった方の萎縮度合いを木村・竹村分類で調べた結果、C-1だった方に胃がんがみられた割合は0%、C-2・C-3で2.2%、O-1・O-2で4.4%、O-3で10.3%であったと報告があります。萎縮度合いが高くなるほど「胃がんの発症リスクも高い」ということ分かります。
鳥肌胃炎
鳥肌が立った皮膚のように、細かいブツブツが均一的に拡がっている胃炎です。リンパ濾胞(ろうほう)の過形成が見られる状態で、前庭部から胃角部に生じるケースが多いです。ピロリ菌に初めて感染した時に生じる、過剰な免疫反応とされており、ピロリ菌に感染した子どもや若い方にみられる胃炎でもあります。
若年者の胃がん、特に未分化型胃がんの発生母地(がんができやすい場所)とされています。特に若年女性の場合は、未分化型がんの発症リスクがかなり高いとされているため、要注意です。
慢性胃炎と胃がんのリスク
萎縮性胃炎はピロリ菌との関わりがある胃炎です。重症度にもよりますが、胃がんの発症リスクが高い状態だと言えます。