大腸ポリープ

大腸ポリープとは

大腸ポリープ大腸ポリープとは、大腸の内側に向かって隆起した病変です。大腸ポリープは「良性か悪性か」については問わないと定義されているため、出っ張っているものは全部大腸ポリープになります。
平べったい病変もポリープとして扱われますが、明白に大腸がんと診断できるものはポリープとはいいません。
一般的に自覚症状はありませんが、ポリープが大きくなることで出血や腸閉塞をきたすことはあります。またすべてのポリープががん化するわけではありません。

大腸ポリープの種類

肉眼分類

出っ張っている「隆起型」と平べったい「表面型」に分けられます。さらに細かく分けると隆起型は「Ⅰp(有茎性)」「Ⅰsp(亜有茎性)」「Ⅰs(無茎性)」があります。表面型は「Ⅱa(表面隆起型)」「Ⅱb(表面平坦型)」「Ⅱc(表面陥凹型)」に分類されます。内視鏡検査でよくみられるのは、隆起型または表面型のⅡaで、ⅡbやⅡcは稀ですが、悪性化する可能性が高いので見逃しは危険です。

大腸腺腫

大腸の正常な粘膜上皮の腺細胞(粘液を分泌する細胞)に異常をきたし増殖したもので、良性の上皮性腫瘍です。ポリープの中で最もよく見られるタイプです。基本的には良性ですが、徐々に大きくなってくるとがん化する可能性があるため、発見したら切除の対象となります。

大腸鋸歯状病変

鋸歯状(きょしじょう:ノコギリの歯のような形状)構造を有する病変です。WHO(世界保健機関)はこの鋸歯状ポリープを「過形成性ポリープ(HP)」「鋸歯状腺腫・ポリープ(SSL)」「古典的鋸歯状腺腫(TSA)」の3 種類に分けました。
昔は「大腸がんを引き起こさない」と考えられてきたのですが、現在ではSSLとTSAはがん化する病変(1.5~20%)と報告されていて、切除が必要です。

SSL

組織学的に陰窩の拡張・分枝・陰窩底部の水平方向への変形(逆T字、L字型)の中で、2つ以上の所見が病変の10%以上の領域でみられたものと定められています。
内視鏡で見ると、粘液が付着している白色の平べったいポリープで、右側結腸に多く発生します。前がん病変であり切除が必要です。

古典的鋸歯状腺腫(TSA:traditional serrated adenoma )

左側結腸にできることがおおく、松毬様、枝サンゴたいな見た目をしているます。がん化のリスクがあり切除が必要です。

過形成性ポリープ

どの結腸、直腸にもできるポリープです。特に、S状結腸および直腸に発生しやすい傾向があります。サイズは5mm以下で、白くて平坦な形をしていることが多いです。この典型的な形の過形成性ポリープの場合、がん化のリスクは極めて低いとされています。

日本・欧米のガイドラインによりますと、直腸・S状結腸にできた5mm以下の過形成性ポリープは、がん化リスクが低く治療を行わなくても問題ないと記されています。しかしサイズが10mm以上の大きいポリープの場合は、切除するのが望ましいです。

側方発育型腫瘍(LST:laterally spreading tumor)

側方への腫瘍進展を特徴とする左右どちらかに腫瘍が進展していくのを特徴としたポリープです。サイズは10mm以上の病変です。です。大きく顆粒型(LST-G)と非顆粒型(LST-NG)20に分類され、mm以上まで大きくなると、通常の切除方法を行うとバラバラになってしまうため、病理評価が難しくなります。分割せずに切り取るには、入院して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を受けていただく必要があります。

大腸がんの発癌経路

ポリープからがんへ移行するケースですが、以下2つのタイプがあると指摘されています。腺腫を経ないで正常の大腸粘膜より突然がんが発生する(De novo 発癌)場合もあります。

  • 大腸腺腫からのがん化(Adenoma-Carcinoma Sequence)
  • SSLやTSAなどの鋸歯状ポリープからのがん化(Serrated Pathway)

ポリープが急にがん化する可能性は低いのですが、サイズが大きいほどがんが含まれる割合も増えていきます。本邦の報告では、5mm以下のポリープでは約0.5%、6~9mmのものでは約3.3%、10mm以上のものでは約28.2%に、がんが発見されたと報告されています(※1)。

(※1)Sakamoto T, et al. Colorectal Dis. 2013 Jun;15(6):e295-300.

大腸ポリープ切除

大腸カメラ大腸ポリープと表面にできた大腸がんにつきましては、内視鏡を用いて治療することができます。組織型や腫瘍径、肉眼型に応じて治療法が選択されます。治療法は主に、ポリペクトミーや粘膜切除術(EMR)、粘膜下層剥離術(ESD)などがあります。外来で受けられるのはポリペクトミーです。また近年では「コールドポリペクトミー」という、電流を用いずに10mm未満の小さなポリープを切除する方法も普及されています。コールドポリペクトミーはEMRよりも切除後の潰瘍が小さくかつ浅く済むため、合併症(出血・穿孔)リスクも少ないと評価されています
当院では、コールドポリペクトミーを積極的に実施し、出血リスクを下げるよう努めています。正確な診断を下してから、検査中に発見されたポリープをできる限り、その場で切除していきます。

入院が必要な場合

「10mm以上のポリープで一気に切除するのが望ましい場合」「粘膜下層にまで癌が浸潤している場合」「抗血栓薬や抗凝固薬の服用を止めるのが難しく、出血リスクが高い場合」などは、入院しながら手術できる医療機関へご紹介します。

まとめ

ほとんどの場合、ポリープが大きくなることで大腸がんへ移行します。そのため全てのポリープを切除することは、大腸がん予防にも有効だと言えます。当院では、鎮静剤や下剤などに工夫を凝らすことで、多くの方が大腸カメラ検査を気軽に受けられるよう努めています。検査中に発見したポリープは極力全て切除し、再検査を減らしながら大腸がん予防に尽力します。「便潜血検査で異常を指摘された方」「過去にポリープ切除を受けた方」はもちろん、ポリープに関して心配な方はぜひ当院へご相談ください。

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